電話で問い合わせ
相続に関するコラム
2026.2.28

相続放棄でなくなる借金返済の義務と、相続放棄後も残る義務について徹底解説

執筆者
大阪弁護士会所属(登録番号 第47601号)
古山綜合法律事務所
代表弁護士 古山 隼也(こやま しゅんや)
略歴
清風高等学校卒業/大阪市立大学卒業/大阪市役所入庁/京都大学法科大学院卒業
メディア出演・寄稿 等
朝日放送/WEBメディア(Yahoo!JAPANニュース/gooニュース/グノシー/PRESIDENT ONLINE/東洋経済ONLINE/幻冬舎ゴールドオンライン等)
相続書籍の出版・監修 等
弁護士だからわかる!できる! あんしん相続 手続きの「めんどくさい」「わからない」「ストレス」が消える!(Gakken・執筆)/この1冊で賢く備えるおひとりさまの老後大全(宝島社・監修)
専門誌掲載
家庭の法と裁判(2025年4月号 vol.55・担当家事事件の裁判例が掲載)

大阪市職員、大阪・京都の法律事務所の勤務経験を活かし、法律サービスの提供を受ける側に立った分かりやすい言葉で説明、丁寧なサポートで、年間100件以上の問題解決をおこなっています。

はじめに

被相続人が借金を抱えて亡くなった場合の相続をどうするかという問題は、相続人にとっては大きな悩みです。

相続は遺産の引き継ぎだけでなく、被相続人の借金や義務も受け継ぐことになるため、内容次第ではそのまま相続してしまうと大きな負担となるケースがあります。

借金返済の義務から解放される方法としては、相続権を放棄する「相続放棄」がもっとも有効な手段です。

本記事では、相続放棄による借金返済義務の免除と、相続放棄後も残る可能性のある他の義務について詳しく解説します。

1.相続放棄とは

家族や親族が亡くなると、その人が所有していた預貯金や上場株式、土地といった資産だけでなく、借金や負債も相続の対象です。

借金や負債が返済可能な額であれば問題はありません。
しかし、相続するプラスの財産よりも多い場合や返済が困難な場合には、相続放棄を選択することもひとつの手段です。

相続放棄とは、家庭裁判所で手続きをすることで相続人としての地位を放棄することができる制度です。

相続放棄をすると相続人としての資格を失うため、遺産相続に関する一切の権利義務がなくなることになります。

プラスの財産も相続できない代わりに借金返済の義務からも逃れることができます。

1-1.相続放棄の利用場面

相続放棄は、相続人が被相続人の債務の相続を避けたい場合に有効な手段です。
それ以外でも相続放棄が有効な手段となる場面があります。

この項目ではそれぞれのケースにおいて相続放棄を選択する理由やメリットについて、詳しく解説します。

1-1-1.義務からの解放

相続放棄をおこなうことで、被相続人が残した借金や支払い義務から解放されます。

相続される借金や債務には、消費者金融、クレジットカードやカードローンの負債、住宅ローン、事業用のローンや融資返済の残金、個人からの借金、滞納した家賃や光熱費、通信費、税金、連帯保証債務などが含まれます。

これらを残して被相続人が亡くなった場合でも、相続放棄により相続人はこれらの支払いをする必要はなくなります。

1-1-2.面倒な相続関係からの離脱

相続放棄をすることで、面倒な相続関係から離脱できます。

遺言書が残されていない場合の相続では、法定相続人全員が参加する遺産分割協議で遺産の分配方法や内容について話し合います。

ただし、借金である相続債務は遺産分割の対象ではありません。
法律で定められた割合(法定相続分)に従って相続する
ことになります。

この負債の処理をめぐって相続人同士でトラブルになることもあり、その話し合いが煩わしく感じる人も少なくありません。

特に相続人の人数が多かったり、疎遠になっている親族がいる場合、全員が納得する分割方法が決まるまでに長い時間がかかることがあります。

また、遺産分割協議中に不和が生じたり、トラブルが発生することも珍しくありません。

「遺産はいらないから、この面倒な話し合いから解放されたい」と考える場合には相続放棄は有効な対策です。

1-1-3.特定の相続人に相続権を集中させる

相続放棄をすることで、特定の相続人に相続権を集中させることができます。

プラスの財産については一人の相続人に相続分を集中させたい場合、遺産分割協議で全員が認めることで相続分を集中させることはできます。
しかし、借金などのマイナスの財産については、遺産分割協議だけで相続人のひとりに集中させることはできません。

そのため、相続財産全てを相続人の1人に集中させたい場合、その人以外の相続人全員が相続放棄するというのが一番有効な対処法となります。

1-2.相続放棄の手続きの流れ

相続放棄をする場合は、相続開始を知った時点から3カ月以内に家庭裁判所で「相続放棄の申述」をおこなう必要があります。

相続放棄の手続きに必要な書類

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票または戸籍附票
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本や除籍謄本
  • 申述人の戸籍謄本
  • 費用(収入印紙800円分、連絡用の郵便切手)

 

基本的に、相続放棄申述書の書き方や手続き方法自体は難しいものではないため、相続放棄したほうが良いと明らかな場合は相続人自身でもおこなうことができます。

ただし、相続放棄すべきかどうか迷っていたり、時間的余裕がない場合には専門家に相談することをおすすめします。

特に、相続トラブルに巻き込まれたくないと思うのであればなおのこと、弁護士に相談することで法的問題をクリアにすることができます。

初回無料法律相談 実施中

2.相続放棄で得られる効果(免除される義務や地位)

相続放棄は「相続人としての地位を放棄すること」と説明しました。

では、相続放棄による具体的な効果が得られるのか、詳しく解説していきます。

2-1.借金返済

相続放棄をすると、被相続人の借金を返済する義務を免れます

生前に大きな借金を抱えていた被相続人の財産を相続した場合、相続人は返済の義務を負うことになりますが、相続放棄をすることで返済の義務は発生しません。

実際の場面としては、相続債権者から督促書面などにより返済の取り立てがあった際に、家庭裁判所から交付を受けた相続放棄申述受理通知書などの写しを提示することで、相続人ではないことを伝えることができます。

それにより、相続人は被相続人の借金返済から解放されることができます。

2-2.滞納税金の支払い

相続放棄をすると、被相続人の滞納税金の支払い義務から解放されます。

相続放棄は、被相続人の財産や負債を一切引き継がないことを意味するため、被相続人の滞納税金も支払う必要がなくなります。

具体的には、被相続人が所得税を滞納していた場合でも、相続放棄をしていれば支払う必要はありません。

2-3.滞納・未納料金の支払い

相続放棄をすると、被相続人が残した滞納・未納料金の支払い義務から解放されます。

相続財産には未払いの公共料金やサービス料金なども含まれるため、相続放棄をすることで支払いの義務がなくなります。

具体的には、被相続人が生前に支払っていない電気料金や家賃、インターネット使用料などがあった場合にも、相続放棄をした相続人には支払い義務は継承されません。

2-4.連帯保証人の地位

相続放棄をすると、被相続人の連帯保証人の地位も免れます。

相続放棄をしない場合、契約上の地位も相続の対象となるため、場合によっては連帯保証人の地位も引き継ぐことになります。

連帯保証人は、本来借金をした人(主債務者)と同じ立場にあるため、債権者から返済を求められた際に返済を拒否できません。

そのため、相続が発生した際には、金銭消費貸借契約書など借り入れに関する書類の有無や被相続人の信用情報などを確認して、借り入れの有無を調査します。
また、相続不動産に抵当権などの担保が付されていないかを確認することもおすすめします。

個人信用情報機関への照会や郵便物のチェックなどを通じて、連帯保証の有無やその他の借金をしっかり調査しましょう。
これにより、相続放棄の選択が最適かどうか、判断しやすくなります。

連帯保証を含む負債から解放されることは、相続人にとって大きな精神的な安心をもたらします。

ただし、相続放棄は「相続人としての地位を放棄すること」となるため、本当に相続放棄が最適かどうかは弁護士や司法書士など専門家に相談し、適切な手続きをおこなうことをおすすめします。

3.相続放棄後も残る義務

相続放棄は「相続人としての地位を放棄すること」ですが、すべての義務から解放されるわけではありません。

相続放棄をした後もいくつかの義務が残る場合があります。
この項目では相続放棄後も残る代表的な義務である不動産の管理義務について詳しく説明します。

3-1.不動産の管理義務

相続放棄をすることで相続人としての地位は放棄できますが、一定の条件下では不動産の管理義務は残ります。

「現に占有していない」場合には、この管理義務はありません。

「現に占有」とは、事実上、支配や管理をしている状態をいいます。

たとえば、被相続人の自宅で同居していた場合は「現に占有している」ため、相続放棄後も管理義務が発生します。
しかし、長年海外に住む相続人である子が、被相続人である父の相続放棄をした場合、遠隔地にある相続不動産の管理義務は残りません。

よくトラブルになるケースとしては、建物の老朽化が進んでいる場合、所在地を管轄している行政から事故を防止するための応急処置や、火災・盗難を防ぐための最低限の管理をおこなう義務を求められる場合です。

この管理義務を怠り、周辺住民や第三者に損害を与えた場合には賠償責任が生じます。

したがって、相続放棄をした後も管理義務が残る場合には、不動産の適切な管理を怠らないことが重要です。

この相続放棄による管理義務は、①他の相続人が相続するまで、②家庭裁判所で相続財産清算人が引き継ぐまで管理義務は残ります。

法律の範囲内でできる限りの対応をし、不動産の放置による影響を最小限に抑えることが求められます。

初回無料法律相談 実施中

4.相続放棄の注意点

相続放棄は借金返済の義務から解放されますが、他方注意すべき点もいくつかあります。

これらのポイントを理解しておくことで後々の法的トラブルに巻き込まれるリスクを回避できます。

4-1.一切の相続ができない

相続放棄をすると、被相続人の遺産を一切受け取ることができなくなります。

また、相続放棄は原則撤回することができないとされています。

そのため、たとえば莫大な財産が見つかったとしても、その財産を相続することはできません。

例外的な場合にのみ撤回することができます。

① 未成年者などの判断能力が不十分な制限行為能力者が、保護者や成年後見人の同意を得ずに相続放棄をおこなった場合
② 詐欺や脅迫が原因で相続放棄をした場合
③ 重大な錯誤がある場合などに限られます。

相続放棄をする際には、借金が本当にプラスの財産を上回っているか、相続放棄は失敗だったと後悔はしないかなど、しっかり相続財産調査をおこない検討することが大切です。

4-1-1.生命保険金は受け取れる

相続放棄をした場合でも、死亡保険金や共済金などの生命保険金は、受取人が指定されていれば受け取ることができます。

なぜなら、生命保険金は遺産ではなく、保険契約に基づいた受取人に対する給付金だからです。

具体的には、被相続人の借金が多く相続放棄を選んだ場合でも、被相続人が契約していた生命保険の受取人である家族は生命保険金を受け取ることができます。

そのため、相続放棄をしても生命保険金は通常どおり給付されるため、生命保険は最低限の生活費や急な出費に対応できるため経済的な支援として有効です。

4-1-2.特定遺贈による財産の受取はできる

故人が残した遺言書により、遺産の一部を贈与することを「遺贈」といいます。

遺贈は遺言書に書くことで、相続人ではない第三者の個人、法人などに財産を譲ることができます。
そのため、相続放棄をしていても遺贈による財産の受け取りは可能です。

しかし、注意点として、遺贈には遺産のすべてや割合を指定して譲る「包括遺贈」譲る財産を指定する「特定遺贈」の2つの方法があります。

包括遺贈の場合は、包括受遺者(遺贈を受ける人)は相続人と同一の権利義務があるとされるため、債務も含めてすべてを承継することになります。

そのため、相続人が借金の返済を免れたくて相続放棄した場合には包括遺贈を受け取る意味がなく、包括遺贈を受け取りたくない場合は相続放棄に加えて、別途包括遺贈の放棄をする必要があります。

他方、特定遺贈の場合は、遺言で指定されたその遺産のみを譲渡することとなるため、相続放棄をしていても受け取ることができます。

ただし、たとえ相続放棄をしていても、遺贈により受け取った遺産に対して相続税は発生します。

4-2.法定単純承認に当たる行為はしない

相続放棄をした後は、法定単純承認に該当する行為は避けましょう。
単純承認とは「相続すること」をいいます。

 

参照条文 民法920条(単純承認の効力)

相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

 

法律に定められた行為をおこなった場合、単純承認が成立したものとみなされ、相続放棄が認められなくなります。

単純承認とみなされる行為は、法律で次の通り決められています。

 

参照条文 民法921条(法定単純承認)

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

 

相続には3か月の熟慮期間があります。
熟慮期間は相続するか放棄するか検討する期間です。

基本的に、相続放棄をせずに熟慮期間を迎えると、単純承認したものとみなされます

単純承認に該当する・みなされる可能性のある行為
  • 被相続人の財産の処分
  • 相続財産の一部を使用する行為
  • 相続財産の一部を売却する行為
  • 被相続人の財産を自分や自身の家族のために使う行為
  • 被相続人の預金から被相続人の借金を返済する行為(催促に応じて支払った場合など)
(補足)単純承認にはあたらないと考えられる行為
  • 社会通念上相当と認められる範囲の葬儀費用を遺産から支払うこと
※高額すぎないものであり、相続人の利益のために消費したとはいえないため。

法定単純承認に当たる行為があると、相続放棄をしたつもりでも法律上はそれが認められず、相続人の義務を負います。

相続放棄の前後において、法的に問題のない行動を心がけることが大切です。

具体的にどういった行為が単純承認に該当するか、判断がむずかしい場合は信頼できる専門家に相談し、慎重に対応方法を確認することをおすすめします。

4-3.相続放棄の期限

相続放棄には期限があります。

日本の法律(民法)では、相続人が相続放棄をおこなうためには一定の熟慮期間内に手続きをしなければならないと定められています。

この熟慮期間を過ぎると、法的には相続を承認した(単純承認)とみなされるため、結果として被相続人の借金返済義務も引き継ぐことになります。

具体的には、被相続人が亡くなったことを知った日から3か月以内が熟慮期間となります。

この期間内に家庭裁判所に相続放棄の申述をおこなわなければ、自動的にすべての遺産と負債を引き継ぐことになり、借金の返済義務が発生します。
そのため、相続放棄を検討する際には、必ず期限内に手続きをおこなうことが重要です。

3カ月の間に相続財産の調査、相続放棄の決定、必要書類の準備をしなければならないため、相続放棄をするかどうか迷う場合は早めに専門家に相談することをおすすめします。

ただ、相続財産調査が終わらないなど特別な事情がある場合には、例外的に熟慮期間を延長することが可能です。
その際には、熟慮期間内に相続放棄の熟慮期間伸長の申立てをおこない、裁判所に認められることが必要です。
なお、相続放棄の期限がどれくらい伸長(延長)されるかは、裁判所の判断になります。

伸長された期限内で何度でも、伸長の申立ては可能です。
また、相続放棄の期限が伸長されたからと言って、他の相続手続きの期限が伸長されるわけではありません。

たとえば、相続放棄の期限伸長されたからといって、相続税申告と納付は延長されません。
つまり、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に申告と納税を完了させなければなりません。

いずれにしても、相続放棄の時効と適切な手続きについての理解と注意が重要です。

4-4.必ず他の相続人に連絡する

相続放棄をしたからといって、相続全体において、その借金の返済義務は残っています。

相続放棄をした相続人が負うはずだった借金の返済義務は、次の相続順位の相続人に引き継がれることになります。

裁判所などから相続放棄の通知がいくことはないため、他の相続人に対しては相続放棄した人が次順位の親族の方に連絡する必要があります。
連絡しなかった場合には、突然なんの前触れもなく、次の相続順位の人のもとに債権者から借金の督促がくることになりかねません。

相続人間の関係性の悪化や親族間の大きな相続トラブルに発展することが懸念されるため、相続放棄する場合は必ず他の相続人と情報を共有しておきましょう。

ただ、この連絡は法律上の義務ではありません
疎遠であったり、仲が悪かったりする場合に、連絡の必要はありません。

なお、相続放棄をした法定相続人は最初から相続する権利を持っていなかったという扱いになるため、代襲相続は発生しません。

そのため、被相続人の子が相続放棄をした場合は、その子の子ども(孫)は借金の返済義務は引き継がれることはありません。

また、法定相続人が全員相続放棄した場合には誰も借金を引き継ぐことはありません。

選任された相続財産清算人が遺産の範囲内で債権者に対して弁済するなど清算業務をおこないます。

5.熟慮期間経過後に借金が発覚した場合の対応

熟慮期間が過ぎてから、被相続人の借金が新たに発覚した場合、相続人の多くが途方に暮れることでしょう。

十分に財産調査をしたつもりでも、お金を貸していたことを死亡時をきっかけに思い出した個人からの申し出によって、借金の存在が急遽明るみになるというケースも考えられます。

しかし、熟慮期間経過後でも、特定の状況下では相続放棄が認められるケースがあります。

この項目では、相続放棄が認められた例を参考にどのように対応すべきか、詳しく解説します。

5-1.期間経過後も相続放棄が認められたケース

実際に熟慮期間経過後に相続放棄が認められ事例はいくつかあります。

過去にあった判例をもとに具体的に解説していきます。

5-1-1.「相続財産がまったくない」と信じていた場合(最高裁昭和59年4月27日判決)

相続財産が全くないと信じていた場合、特定の条件下では相続放棄が認められることがあります。

相続人が相続財産の存在を知らなかった場合、熟慮期間を過ぎた後でも相続放棄ができるとされた判例があります。
具体的には、昭和59年4月27日の最高裁の判決で、遺産がまったく存在しないと信じていた相続人が後に借金を発見した場合に相続放棄を認められています。

このように、相続財産が存在しないと信じていた場合でも、熟慮期間後に財産や負債が発覚した際には相続放棄が認められる可能性があります。

5-1-2.相続債務の全容を認識した時から熟慮期間開始するとした場合(大阪高等裁判所平成10年2月9日決定)

相続放棄の手続きにおいて、熟慮期間の取り扱いは重要です。
一般的に、相続放棄の意思表示は「相続開始を知った時点」から3カ月以内におこないます。

しかし、相続債務が明らかになるまでに時間がかかるケースもあります。

相続財産の有無を迅速に判断するのが難しい場合、特に隠れた借金や負債は後から発覚する可能性があります。

そのため、相続債務の全容が明確になった時点から熟慮期間が開始すると裁判所が認めた例があります。

具体的には、大阪高等裁判所による平成10年2月9日の決定では、相続債務の全容を認識した時点から熟慮期間が開始するという判断が示されています。

初回無料法律相談 実施中

6.被相続人の借金の調べ方

被相続人が残した借金や連帯保証人と言った契約上の地位を把握することは、相続手続きを進めるにあたって非常に重要なステップです。

先ほどの裁判例のように熟慮期間経過後に相続放棄が認められる可能性があるものの、法律上は相続後の「相続放棄」は認められないのが原則です。

この項目では、被相続人の借金や負債の調べ方について具体的に解説します。

被相続人の借金を調べるには、複数の方法があるため、これらを組み合わせて全体像を把握することが重要です。

なお、被相続人が知人や友人から借金をしている可能性がある場合、本当は存在しない借金を架空請求される可能性もあるため、借用書の写しなどを提出してもらうことが大切です。

6-1.個人信用情報機関への照会

金融機関などからの借り入れに関しては、個人信用情報機関への照会をおこなうことで被相続人の借金状況を正確に把握することができます。

信用情報機関は金融機関からの借入情報やクレジットカードの利用状況を一元的に管理しているため、極めて有効な調査方法です。

具体的には、全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センターやCIC(Credit Information Center)、JICC(日本信用情報機構)などに問い合わせて、被相続人が利用していたクレジットカードやローンの残高、支払い状況などの詳細な情報を確認します。

信用情報機関への照会をおこなうことで、被相続人がどの程度の債務を抱えていたのかを明確にすることができます。

 

参照リンク

一般社団法人全国銀行協会 全国銀行個人信用情報センター

🔗「法定相続人による開示のお手続きについて」

6-2.不動産(抵当権などの有無)

不動産の抵当権の有無を確認することで、被相続人の借金状況を把握することができます。
抵当権が設定されている不動産は、被相続人が借金をしている可能性が高いことを示しています。

たとえば、土地や建物に金融機関から抵当権が設定されている場合、その不動産が借金の担保として使用されていることが判明します。

これを見落とすと、多額の借金を引き継ぐことになる可能性があります。

不動産の抵当権の有無は、法務局で取得できる「登記事項証明書(不動産登記簿)」の「乙区」を確認することでわかります。
登記簿には、抵当権の設定状況や詳細な内容が記録されているため、対象となる金融機関に問い合わせをするなどして負債状況を確認することができます。

予期せぬ負債を引き継ぐことがないよう、相続手続きを進める際には必ず不動産の登記簿を確認し、抵当権の有無をチェックしましょう。

6-3.郵便物(金融機関、消費者金融など)

郵便物には金融機関や消費者金融、不動産担保ローンなどからの通知が含まれていることも多く、返済状況や借入状況の直接的な情報源となります。

債務の弁済は1か月ごとにおこなわれることが多いため、被相続人の死亡により返済できていない場合、2か月以内には請求書や督促状が送られてくることがほとんどです。
たとえば、消費者金融からの請求書や金融機関からの取引明細書などを見ることで、残債や利子の詳細を把握することができます。

また、被相続人の預貯金通帳がある場合は、預金口座の取引履歴も参考になります。

これにより、被相続人の負債全体の理解が深まり、相続手続きの後に発覚する借金を防ぐことができます。
郵便物の見落としは後々のトラブルの原因となるため、相続の初期段階でしっかりと確認することが重要です。

郵便物を通じた情報収集は、借金のみならず被相続人の生活全容を把握するための基本的かつ重要な手段です。
すべての郵便物、メールを丁寧にチェックし、見落としのないよう確認しましょう。

6-4.事業者である場合の決算書等(借入、連帯保証)

被相続人が経営者、事業者だった場合、決算書などを確認することで借り入れや連帯保証の有無を把握することが重要です。

決算書などの書類には、事業に関連する財産や負債の詳細が記載されているため、被相続人の借入状況や連帯保証の詳細を正確に理解することができます。

たとえば、決算書の貸借対照表に「借入金」や「保証債務」が明記されている場合、その内容を精査することで、被相続人の借金や連帯保証がどの程度存在するのかを具体的に把握できます。

決算書などの書類の見方がわからない場合は、税理士や行政書士、弁護士などの専門家の力を借りることをおすすめします。
事業の財務状況を明確にすることで、相続人としての最適な対応策を講じることができます。

7.まとめ

相続放棄による借金返済の義務の解消と、相続放棄後も残る義務について解説しました。
相続放棄は、多くの義務から解放される一方で、プラスの財産も一切相続できないというデメリットもあります。
また、財産管理義務が引き続き存在するケースがあることにも要注意です。

相続放棄を検討している方は、法律の専門家である弁護士に相談し、正確な情報をもとに相続放棄が妥当かどうか判断することが重要です。
また、相続手続きや引き継ぐ義務について疑問がある場合にも、すぐに確認することをおすすめします。
弁護士に相続放棄手続きを依頼することで、法的トラブルを回避し、スムーズに手続きをおこなうことができます。

古山綜合法律事務所では、相続放棄手続きや相続財産調査についての解決サポートをおこなっています。
相続放棄に必要な書類の収集、相続放棄申述書の作成、裁判所や債権者の一括対応により、安心して日々をお過ごしいただくことができます。
相続放棄を検討中の方もぜひご相談ください。

まずは初回無料相談にて、ご事情をおうかがいし、① 相続放棄の必要性の有無、② 今後すぐやるべきこと、③ 不安や心配についてのご質問への回答をおこなっています。
ぜひお気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

初回無料法律相談 実施中